カウボーイビバップが終わってしまった
興味のない人にはどうでもいいだろうし、ここから書いていくことも
分からないでしょうが、衛星放送でやっていたアニメの話です。
SFの、いい大人たちが賞金稼ぎをしてる話です。

毎回毎回、本当に楽しみだった。こんなにウキウキして
待っていられる作品はうれしいものです。
ここ昨今、「あってもなくてもいいもの」やら「本当は全然
たいしたものでもないのに、いろんな事情から大したもののように
みせておくもの」ってのが巷にあふれてて、ギリギリとストレス
ためてたから、この作品がいいカタルシスを与えてくれました。
そして安心しました。「ああ、やっぱりその他のものはつまらな
かったのだ」と断言できるようになりました。

この作品の居心地の良さは、独特のものですが、ことさらBGMの
威力はダントツ・バツグンのセンスでした。
菅野ようこさんの音楽は作品を離れても十二分に魅力的で
車でも、部屋でも、友達とでも充分鑑賞に耐える。
ジャズがこなれて作品に引用できるリーチの長さ、とでも
いうのでしょうか。見ていても楽、なのです。
子供だましなところがない音楽です。

かてて加えて作品そのもののふるまいがよかった。
胸を張って作品がある、と自信を感じるのです。私はこれが見せたいのだ、
だれになにいわれたって、作品こそが大事なのだ、なに?
フリッカとやらで子供がてんかん起こしたから、テレビ放映時は
フリッカひかえてくれ?ああ、じゃあいいや。映像表現に制限
加えるの?ふーん。そう、そうなの・・・じゃぁ放映打ち切りに
してもらってくれ・・・・とばかりにテレビ東京を見限ったセンス。
そしてWOWOWでノンスクランブルでシリーズ全話放映に
持ち込むスタンス。素敵で本気でいい気じゃないですか。

その自信は作品1話1話に凝縮されていて、絵もきれいなら、
はなしの進みも丁寧。見せたい話がハッキリしていて完結させてる。
エピソードからキャラクターたちの感情の機微が伝わってきて、
感情をセリフにして喋ってしまう昨今の子供アニメに慣れた人には
さぞかし新鮮なものになったことでしょう。
「語らない」こともよし、とした作品があってくれることで、
こちらもなんとなしにホッとする作品なのです。

ろくろく解説しないから、「わからない!」ってなげく観客ってのも
いるかもしれませんが、作品にこちらが喜んでついていけるくらいの
ものを加えてくれてますので、「わかんねー!」人は、そうね、
見なくていいよ。そっけなさまで魅力になるからこの作品は
スゲーのよ。

遊びのセンスもダイナミックでした。まさか本当のカウボーイが
出るとは思わなかったし、あってもなくても支障のない回だって
平然とありましたものね(冷蔵庫のヤツとか)。

映像作品を通過して、出てきた時には、入った時とは違った感情を
与えてもらっている。カウボーイビバップは毎回キチンと違う種類の
感情を与えてくれた。ほんのり悲しいのやら、バカに楽しげなのやら。
むやみにアクションやら静かな恋やら。それらは僕らの実生活に
もっていける感情であったりして、応用やら、勉強やらになったり
ならなかったり。ただ漫然と、そこにあってくれることで、感情が
スーッとつながってくれる作品だったのです。

わたしにしてはホメホメでしょう?
本当に好きだったんです。ですからみんなにも薦めたいような、
こっそり知っておきたいような、そんな作品。

それが終わってしまった。
うかつにも「終わる」なんて思いもしなかったから、悲しかった。
だから繰り返しビデオでみていますが、やはり素敵。
辛抱たまらずCDも「BLUE」購入したら、これまた秀逸。
端々が逐一作品へと気持ちをいざなってくれて、こちらの感情が
気持ちよく流れてくれるのです。これは本当に気持ちがいい。

気持ちを大きくながしてくれる作品。
毎週、あたりまえのように流してくれた作品が終わってしまった。
いま、振りかえってその居心地をたしかめているところ。

世界観、設定の話なんかじゃなく、このカウボーイビバップの持つ
居心地、のようなものを私はあこがれる。居心地、そう。そんなもの。

あなたはみました?まだ見てない?そう・・・じゃあ、みてよ。いいから。


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