くたくたのとき

同じところに人は戻ると思う。私はアニメや音楽で、常に同じ
作品に戻っていく。「なんでいつもコレなんだろう?」とか
思いながら、つまり、「理由」らしい「理由」がうまくつかめない
まま、するりと戻る作品である。今回のエッセイはそれを列挙
してみることにする。

● Niea_7(ニアアンダーセブン)(アニメ)
貧乏学生まゆこと居候宇宙人ニアの古い銭湯を舞台に、かなり
ゆうちょうなムードでのほほんのほほんと進む物語。
アニメ史上1、2を争う「貧乏」な女の子の恥ずかしそうで、
派手さが苦手で、迷ってる感じがなんとも素敵。
地味な人間達の地味な思いやりの柔らかさが大好き。
合コンに誘われても気の進まない感じとか、サイフの中身を
気にしてる感じがなんだかとっても「やっぱりそうよな」って
同感してしまう。

特にまゆこが「お話作りが好きだった」エピソードの回想の
あたりが心にしみる。サントラもヌケた感じでいいッスよ。

● 君と僕(東京スカパラダイスオーケストラ・スカパラ登場)
口笛とアコーディオンだけのインスト。このメロディラインを
聞いてると、まわりのいろんな問題を「放って」おける。
気持ちが自分に向いて、ほっとする。

● エディ・リーダー(歌手)
もとフェアーグランドアトラクションのボーカル。某FM番組で
「That's Fair」という曲を聴いてすっかり心をとられた。
ゆっくりとして、焦ってなくて、周りなんかみてない感じが
ベリーグー(死語?)。

● アライツ・エタ・マイデル(デュオ)
アコーディオンとタンバリンを武器に、高速演奏とゆかいな
スキャットがカッコイイ上に、キュートな声色が素敵。
なにより、「楽しそう」な気持ちが伝播してくるのがたまらない。

● トライガン(アニメ)
ただ見流すだけで、作品のもつスピード、スタンスがこっちの
気持ちにするする流れ込んできて、姿勢がシャンとする。
次回予告のモノローグの言葉が毎回含蓄深くてうれしくなる。

● フルーツバスケット(アニメ)
● ぼくの地球を守って(アニメ)
やさしい言葉がたっぷりでてくる作品。アニメも漫画も素敵。
少女マンガでしょ?とか早々にカテゴリーしてしまうには、
あまりにたっぷりとした深みがある。

● パット・メセニー(ジャズ)
「ラスト・トレイン・ホーム」「ザ・サーチ」「イン・ハー・ファミリー」
など、人の別れや慈しみをものすごく大きなスケールの詩で
歌い上げるような印象を持つジャズ。「ファルコン&スノーマン」という
映画サントラのテーマチューンがあるんだけれど、賛美歌のような
美しさが高らかに、純粋に伸び上がってて、ものすごく気持ちいい。

● プリシラ(映画)
女装趣味のゲイたちが、バスに乗って巡業するオーストラリアの
モノスゲー楽しい映画。苦境にあるはずの登場人物三人の、
現実からされる仕打ちに対する「姿勢」がとてもきちんとしてて、
その上「楽しんでやるんだから!」という一見強がりのような、
それでいてホントに楽しそうに向かえる態度の良さが秀逸!
誰彼にどーのこーのされてガッカリ!ってことは世の中にたくさん
あるけれど、この映画は「いろいろされたにしろ、大事なのは
それに対する態度の方だよ」って言ってもらってる感じがとても
好きなのだ。

● リトルダンサー(映画)
● フルモンティ(映画)
● コミットメンツ(映画)
● トレンスポッティング(映画)
● 恋はハッケヨイ(映画)
この5つに共通する項目がふたつある。イギリス映画であることと、
主人公はしみったれてる、ってことだ。そのくせ、作品の最後には
必ずしもハッピーエンドなんかじゃないものもあるけれど、
気持ちに「おさまり」をつけてくれる作品達。
社会からそれとなく「ドロップアウト」を余儀なくされる主人公
たちが、あまり冴えたやり方ではないにしても、立ち向かおうと
のそのそと歩き出す気持ちが素敵な作品たち。

● Old Time Southside Street Dance(AEC)
気が狂いそうに頭の中をひっちゃかめっちゃかにしたいとき、
アート・アンサンブル・オブ・シカゴ(AEC)のこの曲は
ズバンとめちゃくちゃにしてくれる。知ってる限りの音楽では
クラッシックの早弾きか、この曲のスピードがサイコーでは
なかろーかと思ってる。ヘッドフォンで最大ヴォリュームで
脳天直撃100メガショックを受けると、かなり「スッ」とする。

● バタアシ金魚・お茶の間(まんが)
このまんが読んで走り出さないでいることは不可能だ。まず心が
ダッシュする。アドレナリンが充満しまくったら、今度は走れ。


などなどと、これまでエッセイに出してきた各々の作品、アーティスト
は間違いなく素敵なんだけど、ここに箇条書きした作品も、やっぱり
ワタシの「湧くちから」には間違いなくやはり黙ってられなくて、出して
しまった。

かえって、こうした小粒な作品の方が、こっちの性格にすんなりいろんな
ものを放り込んでくれている感じがするし、これらの作品はもっと
評価されていいと思う。もっともっと評価されていいと思う。
だってすごいんだもん。ホントにスゴイ。

 

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