遠藤淑子漫画万歳!

エッセイページでありながら、時々マイナーに更新せねばならない、ってのが
このページの愉快なところでして、わたしたちの宝「遠藤淑子先生」の
新刊のたびに爺(友人)やらワシがソワソワしてはメロメロドッキューン!と
本屋にダッシュしては読んではムフー、と満腹感を得るのがなんとも
たまらんカタルシスなんですな。他の作家じゃこうはならないから、
やっぱり大好きな作家なんでしょう。

さて、ここでPUSHする側の連中についてはなそう。
一人は東京でひげづらのJAVA会社の30オヤジである。もうひとりは
愛知で漫画描きのさえない30男である。きっと遠藤先生にはありがたくない
少女漫画読みである。
でもぼくらは遠藤マンガの激烈なるファンどもである。彼女のマンガに
うっとりしながら「フリーク!」を自称をする連中である。
先生の作品にぼくらは弱るたびに励まされ、人を勇気づける心をみつけだせた。

言い遅れたが、遠藤淑子先生とは漫画家である。
白泉社の少女マンガの雑誌によく載っていらっしゃる。
とはいえ、あまり恋に愛にメロメロしない作品が多い。
メロメロはしないが、すこぶるいい気分になれる漫画作品がたくさんある。

「プータオ」なる雑誌の先生のエッセイマンガだってチェックしたものだ。
「アンジェリーク」ってのを誉めたたえていらっしゃれば、ぼくらは
それを話題にした。「かの先生はかのゲームをたたえていらっしゃる!」
「そうかそうか、やらねば、みねば!」ってなもんである。
しかーし!ストーカーじゃないのである。ただのファンなのである。

あのギャグセンス、心づかい、眼線のやさしさにゾッコンなのである。
かの先生の作品は「絵」に関してはちょっと難もある。あるが、それを
さしひいても読んでゆくだけの魅力がある!あるのですよ!スンゲーんですよ。

ゆえーに、ここにこっそり、かの先生の作品をたたえるつもりでコンテンツを
組んでみることにしました。ぼくらのことはいい。このページを読んだことで
遠藤先生の作品に触れる人が増えるといいな、と思います。では。

遠藤先生の作品と、そのおおまかな説明
(文:アンドながや

エヴァンジェリン姫シリーズ
●(1)王室スキャンダル騒動

エッセンシュタイン国はヨーロッパの小さな貧乏王国。ここの姫の
エヴァンジェリンが庶民派のセンスでもっていろんな騒動をひきおこす
ドタバタコメディ。
ん〜、な〜んでこんなにありふれた話しにひっかかってしまうのか、それは
この作品の庶民なセンスにあるかと思います。 
「こんなにたくさんの宝石はじめてみた。たちくらみがしてきた」
これが姫のセリフなんでしょうか。こうしたところが遠藤先生の魅力ですね。

●(2)南から来たインディラ

王国に象がまぎれこんできた。ヨーロッパの小国に象!ああっ!これは
少女漫画じゃねーのかよ!遠藤先生!ってかんじのイントロですが、
その象こそ「インディラ」。

●(3)夢みる佳人

「郵便物を出せ!」郵便局に覆面をして包丁を出す姫をみたことない人は
大急ぎでこの巻を買いに走るように。「ひぇ〜、命ばかりはお助けを!」
これが少女まんがのテンションなのでしょうか!ぼくらは遠藤先生の
こんな小ネタが大好きです。
「はいっ、スロースロークイッククイック!」といって牛とダンスする
エヴァンジェリン姫のお話が読みたくなってウズウズしてきたアナタはもう
遠藤ファン!さあ!本屋にダッシュだ!・・・・と、いいつつ、古本屋の
方がみつけやすいかもね。

● マダムとミスター(現在5巻

私はこのシリーズを紹介されて遠藤マンガにハマったのでした。
ヒロイングレースはもとメイド。ジョンストン家の亡くなった爺様にみこまれて
短い結婚生活をしたものの、主人は亡くなり、いまや若き優秀な執事グラハムと
日々上流生活を送っている。
が、生来持ってうまれた「ギャンブル魂」や「冒険心」からなにかと事件に
突入していっては、グラハムに面倒をかける物語。
なーんてイントロだけ書くと、なんだかジットリ重そうな気もしてくるでしょうが、
そこが遠藤マンガ。
「そうよ!あたしのもらった財産はビタ一文やりたくないわっ!」
などの庶民的セリフで読んでいる側がホッとできます。
あまりにも名言が多いので、ここでは書きようがありません。1巻読んで見て
面白くないや、ってんならメールください。心がやさしくなれる作品です。

● 心の家路(読み切り短編集)

・家族ごっこ2

高校の先生だった母親と元教え子が再婚した。
その1ヶ月後、母親は事故で帰らぬ人に。
のこされた二人の子供と若い義父との奇妙な生活が始まった・・・。

・1/2ヒーロー

売れない役者、千晴のもとに、5年前行方不明になった兄の一衛が
ころがりこんできた。
一衛は天才子役といわれ、幼い頃から千晴の目標だったのだが・・・。

・7月

漫画家を目指す俊と、役者の卵の鈴香。
何となく付き合いだした二人だが、時が流れるにつれ
徐々に心がすれ違っていく・・・。

・グッピー

ストーカーにつきまとわれた一世。
調査に訪れた刑事は中学校の同級生「グッピー」だった・・・。

・心の家路

麻薬所持で捕まった高校生ジェシィは180時間の社会奉仕を命じられた。
訪れた家には、レックスとハルという2人の青年が暮らしていた・・・。
遠藤淑子得意の読み切り短編集です。
本領発揮といった感じで、いい話が多いです。

遠藤作品には不幸な生い立ちをおった人たちがよく登場します。
日頃は明るく強く生きている彼らですが、ふとしたきっかけで心におった
深い傷が顔をのぞかせ彼らを苦しめます。
ただ、最近のこの手の作品と決定的に異なるのは、全編に登場人物たちに
かける深い愛情があふれていることです。
表題作「心の家路」で重い病にかかったハルが
「自分の気持ちをわかってくれる人なんかいないんじゃないかと思いながら、
でも愛されたいと思っている」
とやさしくジェシィに語りかける。
決して激しくなく、しっとりと、あたたかく心にしみいる登場人物たちの
会話・・・。
はっきりいって泣けます。


(ながやコメント)

この巻のはじめに「家族ごっこ」というのがある。高校出たてのピアスした
男の子が高校の先生の「熱血指導」で見事結婚したのに、先生は事故死。
残った先生の連れ子とピアスした「自称詩人」の男の子のふれあいの話。
子供はいつだって「子供」扱いされてるけど実は大人が考えてるより
うんと沢山の心配や考え事をして、気を使っていきてることを予感できる
作品。海ちゃんという幼稚園に通う女の子がいう。
「普通じゃなくても、家族だとおもってたのに!」
台詞が作品にちょうどよい重さをつけてくれます。
「1/2ヒーロー」「7月」「グッピー」「心の家路」この巻に入ってる読み切りは
全部素敵。「映画会社の人にきいたけど、おまえ、がんばってるんだってな。
おまえ、すごいよ」・・・・普段人にいってもらいたくなるセリフが
気取らずに使ってあるので、ジンワリいい気分になります。

● 山アラシのジレンマ

「さあ、みんな、西村を勇気づけるためにスクラムを組もう!」
きっぷのよい主人公は一見外人。なのにやどる魂は日本のド真ん中の
「てやんでえ節」。主人公のガールフレンドの鮎子が主人公をくっちまうほどの
きっぷの良い女の子。スカッとできる作品のつまった巻です。
スケ番はってる女の子の告白もの、お見合いした相手が「熊」に見える
話、素敵な作品集です。

● だからパパにはかなわない

外人のパパは一見弱い。その娘十子(とおこ)はパパにイライラしながらも
頼りないパパを助けて日々面白おかしくすごしている。
「クリスマスはパパと踊ろうね「・・・・ちょっとだけならいいけど」
十子は心の奥でいつもパパにはかなわないと感じてる。でもヘラヘラしてる
だけにみえるパパにはついついツッコミしてしまうのだ。
このマンガ作品には名言が多い。
「血がつながってりゃ理解しあえるなんて大間違いだ!」
こういったことに心傷ついたことのある人は、一度読んでみてください。
答えにはならないかもしれないけれど、道が一本みえてきますよ。

● 退引(のっぴき)町1丁目15番地
● 退引(のっぴき)町お騒がせ界隈(1)(2)

この3巻はまとめての説明にさせていただきます。シリーズですね。
「暴れ馬だ〜〜〜〜〜!!」で始まる少女漫画。しか〜も〜、町内を
走ってきたのは「しま馬」!そんな〜!こんな〜!しかもこのしま馬が
巻のあとの方ではすぶり1000本もやっている!おお!これぞ遠藤マンガの
素敵なスラップスティック・コメディの真髄!
遠藤マンガでは、子供が子供なりにがんばってる。そしてそれを見守る
大人が大人の中でがんばってる。なにかにうまくいかない人達が
迷ってやってきては、自分なりの解決に向かって歩いて行く。
読者は作品の姿勢の良さにジンとくる。なのに作品は
「おまえんとこのポンポコピーおやじはどうした?」なんてな台詞から
できあがっている。これぞ遠藤マジックではなかろうかね?

● ラッコはじめました

ラッコはセンセィティブないきものである。大事に扱わないとすぐに弱る。
弱るくせにこの作品のラッコはいきがる。いきがってははしゃぐ子供に
「わたしはイタチ!」なんてな看板をドーンとつきつけたりする。
この巻も短編集です。忍者と姫、雌ヒョウと男の子の話がはいってます。
雪男になって帰ってきた恋人の話しもあったりします。
でもラッコの魅力がギンギンに光ってるので、まずそれから読んでください。

● 狼には気をつけて(1)〜(4)(表題作・他読み切り1編)

「荒くれ者大募集!!」の求人広告に応募した貧乏な私立探偵フォレスト。
現れた雇い主は、わずか10歳の天才少女アリスだった・・・。
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一応1巻という事になってますが、はたして2巻は出るのでしょうか?
白泉社のコミックでは1が出たまま何年も続巻がでない事がよくあります。
遠藤作品の特徴の一つなんでしょうが、この話にも妙に悟った子供が出てきます。
この子供たちに周囲の大人たちが振り回されるわけです。
そのかみ合わない会話がまた秀逸なのですが、なおかつ物語に深みをあたえて
いるのはどんなにませていても、やはり子供は子供であり、決してスーパーマン
ではないという事です。
周囲の大人たちは、こましゃくれた子供たちに振り回されながらも、彼らを深く
愛しているんですね。
やっぱり愛です、人間にとって一番大切なのは。


(ながやコメント)
お金持ちのアレクサンドラは10才そこそこの女の子。そのボディガードに
やとわれたのがもと警官の私立探偵キースくん。
アレクサンドラは賢く、お金持ちなだけにいろんな事件に巻き込まれる。
「真夜中男の部屋に上がり込むには10年早いぞ」
「明日のことも分からない時代よ。できることは今しないと」
こしゃまっくれたセリフの奥に、キースくんへの信頼がたっぷりふくまれた
作品。3巻には「星の大王様」という短編が入っています。サンテクジュペリの
ニュアンスの絵だけに、内容のギャップが愉快です。

● ハネムーンは西海岸へ

偽装結婚のハネムーンのふりをした探偵事務所のふたりがサンフランシスコで
大暴れ!ってこれじゃまるで土曜の2時間ドラマみたいなイントロですが、
まさにそんな感じのドタバタもの。
短編がつまっているので後半では「スネ毛のはえたお嬢様がいるかー!」
などのスラップスティック・コメディがあります。けっこう初期の作品集。

● スイートホーム

立ち退きをさせようと画策する不動産会社から派遣された主人公は、
悪辣な父親が大嫌いな大学生の男の子。派遣先はなんと女性専用の
ペンション。バレないはずのない女装でヌケヌケとあがりこみ、
ペンションを運営してる3人姉妹にギッタギタにされるイントロから、
やはり心やさしいゆえに、ペンションの事情も知ってしまう。
姉妹はその各々が自分の「非力さ」をいうが、主人公は彼女らの
必要を伝える。
「つぐみちゃんがなにもできないなんて、そんなことないさ。
和美さんも直美ちゃんも強くいられるのはつぐみちゃんがいるからだ。
つぐみちゃんは他の皆が一番してもらいたいことをしているよ」

ああ、またも居心地のいいセリフがある。遠藤マンガが秀逸で
他に変えようのない魅力がここにはある。
短編集の巻なので、他にも火星人のでてくる話しやら、ファンタジーで
魔法使いの話しがあったりする。すべて遠藤節がいきてる。

● ヘヴン(表題作・他読み切り1編)

核戦争後の荒廃した地球。
失業中の元兵士マットはふとしたきっかけでロボットを1体手に入れた。
そのロボット「ルーク」は戦争前の技術で作られた高性能ロボットだった・・・。
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2002年3月現在3巻まできてます。遠藤淑子は時々SFを書きます。
とはいえ、そこは遠藤作品なので、あまりSFらしくない話が多いです。
この話もロボットがでてきますが、別に目から光線を出すわけでもないし、空を
飛ぶわけでもありません。
ただロボットという、人間と異なる視点というのがいい味をだしています。
荒廃した世の中で荒んだ生活を続ける人間たちを一歩離れて見守っている・・・。
その静かでありながら、決して冷たくない視線は何となくホッとする気持ちに
なります。

● 天使ですよ

3人のさえないギャングを「天使」と思い込んだ女の子の話。
失恋した「スズキくん」そっくりのサイボーグと同居する女の子の話。
王妃が「白鳥」なまま、結婚を強いられた王子の話。
これまた短編集ですね。
白鳥がいかにも心根が凶悪そうで「がぁ!」とばかり鳴いてていい感じです。
遠藤マンガの醍醐味は話しのはしばしに出てくる「動物」の味わいでもあります。
白鳥が美しく見えてこないこの作品も読んでおくべきだとおもうがね〜。

● 兄貴

貧乏劇団員の兄と、アメリカ留学してる弟は擦れ違いの生活をしてる・・・
ってな話。短編集で他に3作品ありますが、イマイチパッとしないのがこの巻
でしょうか。江戸っ子節の利いた「いつかどこかで」が光っております。

● スマリの森(表題作・他読み切り1編)

白いキタキツネ「スマリ」とその狐家族の森での生活をつづる物語り。
遠藤先生はときどき擬人化した動物を描きますが、1巻まるまるそうした
話でまとめてくれるのはファンとしては非常にうれしい!
人間以上に人間臭いツルやフクロウとの会話も素敵だし、なにより
「おれはミンクだぁ〜〜!」
叫ぶ「親分」も可愛くてしかたありません。

先達の「狼には気をつけて」もそうでしたが、「生き物」を遠藤先生が描く時、
ちょっぴり「悲しい」現実を見せてくることがあります。
基本的に楽しい作品の描ける先生だけに、そんなに辛らつな表現を
してないはずの「悲しさ」がイマジネーションのせいで、かなり
こたえることがあります。その点で、この作品は自然に生きる動物ゆえに、
主人公スマリがみせる、どこか達観した視線が、読んでいて少し、恐く
なってしまうのです。いえ、決して表面に出てくる心情ってものでも
ないのですが、ここが遠藤先生の魅力です。
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以上。30男どもの知ってる遠藤作品たちでした〜。

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