照明デザイナーの話

私はNHKのラジオもテレビも好きだ。淡白な感じのする番組がたくさん
あるけれど、夜中や短い番組の中に、息をとめたくなる程密度の高い
番組を送ってくることがある。

最近は特に民放がヘナチョコなので・・・・おっといけねえ、ここでは
照明の話。NHKで「視点・論点」なる15分程の番組がある。民放で
いうなら、番組の間のCMのような番組なんだけれど、これがなかなか世の中で
日の目を見ないようでいて、そのくせ各分野の隠れた専門家の話がきける
貴重な番組なのだ。それも、毎日ちがうジャンルのちがう人が15分のもち時間を
自在に使っている。

で、その日は「照明デザイナー」さんのでている時だった。
その人は「光」の話しもしたけれど、重要なのは「光と影を使うこと」といったのです。
光りは分かりますが、「影」も使え、と言ったので、ほほう、この人は・・
と少し前のめりになりました。

今の社会の方向では、「すべてが明るい」っていうように照明を使っていこうと
しているそうです。あらゆるところを明るく、ハッキリとさせることが「良い」
とでもいうように。

そのデザイナーさんは「光は減らしてもいいのではないか」といってました。
光の過食症。光り、それも大量の光の増量だけでは、世の中はつまらなく
なってゆくというのです。

光の弊害についても以下の様に箇条にして説明してくれました。
● 光の均質・・・影を作らない空間ばかり増える
● 真っ白い光ばかり・・・光は色で楽しむことがもっとできる
● まぶしい光がそこかしこにたくさんある
● 変化のない光・・・うつろうのが大事なものなのに、単一の、同じレベルの
           光ばかり見ている。それは拷問に等しい。

ん〜。いわれてみて「そーだよな」って思える。
均質ってことのつまらなさ、多様性を発想する、その愉快さは照明の段階で
気づけるものだったのだ。これを聞いたからといって、じゃあ、まず部屋の
照明から・・・ってやれないのももどかしいけれど、ハンズとかにいったら
照明のコーナーくらいはのぞこうっていう気になるよね。

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