私は入団して三年目なので、消防団内では「三年兵」と呼ばれる。なぜか「兵」と
呼ばれる。入団当初は「なんでだろー」とか思ってましたが、入って一年もすれば
これは「兵」ってのは当たってるな、とか思うようになる。

つまり、火事場で消火活動なんてのを目の当たりにすると、絶対的な命令系統が
いるのである。テキトーにやって、フラフラしようものなら命に響くことだって
たくさんあるのだ。ゆえに、消防団内では「なん年やってきたか?」で上下が
きまるのですが、これは実年令とは関係ないので、慣れないうちはおおいに戸惑う。

中学まで先輩・後輩でやってきた「長男連中」が消防団に入るものだから、なんとなしに
顔を知ってたりするのですが、大人になってからはこうした「顔を突き合わせて一緒に
なにかする」ってのは、それこそ希なことではあります。

さて、消防団。
4月から、毎朝訓練しているのが我が4分団。
これは特に署から命令でも強要でもないので、他の分団はさほど4月中にはやらない。
つまり、4分団管轄内に所属する団員は、週に3、4日、消防団の訓練を出勤前にする。
出勤前!!つまり朝5時には集合して、7時に終えて、そのまま仕事にゆくのだ。
眠くないかって?眠いさ!!


日曜にだって早朝からやってますぞ↑(写真は階梯部隊)

眠いが眠いがとにかく起きる。起きて運動のできる格好をしてゆく。すると同じ部隊の
人たちがキチンときている。時間厳守ッスよ。朝の5時に。偉いよ、みんな。

で、ポンプ・カハン・階梯というおおまかに3つの部隊に分かれて各々の練習をします。
訓練っていうから「水だしてジャー」みたいなものを想像してしまうのですが、
まぁたしかにホースで車両から放水もします。でもやってる練習は「キョウレン会」なる
5月末にある町内の大会のための「ソウホウ」というものです。
様式ばった過程を、時間で競うのです。競う!つまり、危険なほど雑にやっても減点、
早いだけでは意味がなく、しっかりと、節度を持ってシャカリキに走るのです。
朝の5時から!団員の家族の人はお父さんをねぎらってあげるに値しますよ。マジで。



朝から走るとどうなるか?吐きます。
でもそんなのを大会まで2ケ月続けます。その間の土曜・日曜もなんのかんのと
訓練があったり、飲み会があったり、もうプライベートな時間なんてマットーに
やってたら持てないはずです。ちなみに今年のGWは訓練の全くない日は二日だけ
でした。これは、なんというか、普通の社会生活の上で考えたら、もう、ホントに
ボロンボロンにされます。だから消防団に入るのをゴネるひとの気持ちは分かります。
分かりますけど、やってない人にはワカンネーものも山ほどありまして、やってねー
うちに「消防団は・・・」とグダグダ言われるのも実に心外です。

飲んでるし、時間をとるし、火事になれば夜でも早朝でも出動しなくてはいけませんが、
その火事という「イザ」って時があるときに、「消防団なんて、ちっ」とか言ってられません。
人の住んでいる家が燃えてるんです。ちょっとでも早く現場につくことで、燃えるものが
少し減るんです。自分の家が燃えていることを想像してみると分かりやすいのですが、
火を消す人たちが「チッ」とか思ってて、チンタラされてると思うとムカつくでしょう?
一生懸命やる他はないんです。

「なんで俺が・・」と思わないことも全くないともいえません。
でも世の中理不尽のように思えることの向こうに、理不尽でも理不尽でなくとも突破しなくては
見えてこないものがあるんです。
朝の訓練はそう言う意味で試練ではあります。みんな体をどこかかしこか壊してもいます。
理不尽?ええ、そうでしょう。でもそんな次元では火事ってものには立ち向かえませんので。
チームワークがうまれるのは、納得いかねーってものの中を突破してきた人たちでうまれるとも
このごろでは思えるんですが、思い込みでしょうか。

 


この写真を撮った日は朝6時から昼の3時まで訓練してました。みんな顔が赤く焼けて
いました。グビグビとペットボトルを飲み、弁当をバクバク食い、汗をダーダー流して
声を出して頑張ってました。新兵(入団一年目の人はこう呼ばれる)の子も
「なんでこんなことしてるんだろう」という感じを示しながらも、やってくれます。
消防団ならではなんですが、意外に人はやるんです。文句も意外にでないのです。
(文句はない、とはいってません。あってもそこは皆大人ってやつです。様子は
 見ます。まんざらおかしくないって思えるラインにたどりついた人は消防団を
 納得します)

うちの町では5年が任期となってますので、わたしは丁度まん中の年にあたります。
1、2年のうちはひたすら「なんだろ?なんだろ?これは?」ってのが感想です。
消防団はいろんなものを失わせますが、いろんなものも与えてます。
苦しいですよ。でもそんな次元の話じゃないんです。本気でやりはじめたらものすごく
深みのあるものなのもうなづけます。町の仕組みのいくつかが分かることでしょう。

消防団はなにをしているか?
けっきょくうまく言えませんでした。
写真から想像してください。こういったものを週の半分以上やってます。
私の右腕はパンパンに張ってます。今年は本番まであと2週間。各部隊の優勝が
目標です。4分団はそれをしでかしてきた厳しい部隊なのです。
ホント、厳しいです。ゆえに、他でみられない人間の様子が赤裸々です。
町の火事は署の方をはじめ、こうしたメンバーワークによって鎮火されてます。
頑張ってます。ホント、ホント、頑張ってます。

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