作成日: 11/02/13  
修正日: 11/02/13  

作り上げた人ともらい受け継ぐ人

民主党の小沢一郎元代表とエジプト・ムバラク元大統領


一からなにかを作り上げるっていうのは本当に面白くも難儀な事業です。多くの人はそういったことはせずに
できあいのものに、ちょんと乗っかる感じになることでしょう。
お金も時間も人脈も総動員するっていうのが「一から作り上げる」ことの凄みです。莫大な資金がなくっちゃ
できないし、時間をかけるにしても、他人の時間まで存分に拝借することができなくちゃなしえないことだから
相応に人徳もなくちゃできない。誰もにできることじゃない。

エジプトでムバラク元大統領が退陣に追い込まれてしまいました。すくなくとも激変する中東にあって
観光業で儲けを出せるほどの治安を維持して来れたのは強権にしても氏の力だったのでしょう。
パキスタンのムシャラフ氏もそうでしたが、イスラム教のさなかで、軍事力を背景に欧米との交流に
尽力し、一定の安定感まで達成した人の「後日談」はどこか無惨な印象を受けます。
親族の浪費、コネ、賄賂の話が必ず出ますが、それ以上のサイズで「安定」を生んだ功績を、軽視してる
印象に映るのはなぜでしょう。

民主党も今現在、小沢一郎という人がやり玉に上がっています。菅首相、岡田幹事長ともども「党を出て欲しい」
ようなニュアンスを発していますが、上のムシャラフ、ムバラク氏と同じ印象があるのです。
作り上げるまでには「その人」の人脈、お金、時間に「乗っかって」来た人たちが、今そこにある
人工的な「安定感」や「既得権益」を貰い受けたまま,そのメリットは手中にして「作り上げた人自身は要らない」と
いって「さよなら」をいうのは、なんというか、失礼です。
小沢さんを見てて、やったことが何かは私になんか分かるもんじゃありませんが,見ていてマスコミと民主党の
風当たりのひどさは嫌になります。小沢さんを使うだけ使って、「守らない」姿勢はひどく気にかかります。
いざ、というときに「守らない」仲間、というのは、ひどいものです。「守らない」上に「出て行け」という
攻勢に出ている。失礼。

こういうときに「正しいもの」で推している人間を、私は忌み嫌います。
安普請な「正しさ」よりも、「適切な」応じ方を見せるのが、政治家ならマナーなんじゃないですか?

作り上げた人の功績は、それを引き継ぎ、貰い受ける人こそが讃え、お礼するものだと思います。
今の世の中に思う感情の一つが「報われなさ」です。頑張っても頑張っても頑張っても、報われない、という
終わり方をさせられる事を、こんだけ目の当たりにされると、「なんにもしない人」の方が得みたいに見えてくる。

なんにもしない人、が「怪我をしない」という得を維持できると、今度は「閉塞感」に至ります。
実際、閉塞感でパンパンです。
だからこそ、「作り上げた人」たちには、相応に讃えがあることが妥当だと思うんです。

「作り上げる人」、に比べて、「もらい受け継ぐ人」、に人徳を感じにくいのは、根回しや準備などを
「作り上げた人」ほど気が利かなく、雑に振る舞う傾向を感じます。作り上げるほどの繊細さには欠けるのに、
「今あるもの」の「使い回し」に終始して、「打開」がすごく下手。本当は「もらい受け継いだ人」こそ、
先代以上の創意工夫をしなくてはいけません。ずっと「見比べられるから」です。人はそういう目で見ます。

ムバラクさんがエジプトで80歳近くまでしてきた「安定」という財産の威力と恩恵も認めてあげるべきです。
ムシャラフさんがパキスタンという地勢のさなかで作り上げた「安定」の恩恵も、人々は享受したはずです。
そういったメリットの面を承っていた人もあるんじゃないかなあと、ニュースを見ながら感じます。
ああ、誰もお礼を言ってくれなかったんだね・・と。
アメリカの態度のくるくる変わる様子も毎回すごいです。人生がまるごと翻弄されちゃう目にあわせる国のように
映ります。

もらい受け継ぐ人たちは、せめて市井の人たちが言わないで済まそうとする「讃え」を、せめて与えて欲しいのに、
このごろの世の中ったら「ののしり、叩きだす」ようなことばっかりで、ツマランのです。
人の寛容さを魅せる機会に捉え直す人はいないもんかね。一斉に「正しい」だけのことばっかり大合唱してる
醜さったら、みぐるしいったらありゃしない。

いろいろやったろうけど、「ありがとう」はあっていいと思う。これが欠けてる。だから人が荒む。当たり前の事。