作成日: 11/07/24  
修正日: 11/07/25  

「コクリコ坂より」を観て参りました

夏の映画です


思いつきでした。日中働いてて、そういやジブリ映画はじまってるじゃん。みなくちゃ、と
直感が働きまして、仕事をはけてから、まず久々のラーメン屋さんでたらふくいただきました。
ご機嫌なところで最寄りの本屋さんでお気に入りの本を買っちゃったので、読まねば!と
珈琲屋さんで夢中になって読みきるころには、ちょうどレイトショーがはじまる頃合いで
実にリラックスした心持ちで映画に向かえました。

今日はテレビのアナログ放送が終わる日です。ジブリ映画がはじまる頃合いには、
日本テレビ系列がしきりにジブリ特集を1ヶ月くらい打つのが、正直なところ、嫌なんです。
ジブリの映画は、その夏にやる映画だけで十分なんですよ。事前の宣伝とか小出しな番宣は
いらないんですよ、とかいいつつ、「海が聞こえる」の放映はとってもうれしかったんですよ。ハイ。

夏はジブリ映画が似合いますね。内容について書いたって仕方がないので書きません。
それでも感想は書きたいのです。
DVD「ジブリがいっぱい」のハウスのCM、という流れの上にある作品のように感じました。
いい作品です。非常に軽くて、心地よいと思いました。カタルシスとか醍醐味のような「重さ」は
省かれており、「昨今のジブリ映画」らしくすんなりしています。

いじめも原発もモチーフとして入っていない「昭和のいいとき」の映画のようにも観られがちでしょうが、
私は主人公の女の子(メル、でいいのかな?)と、ヒロインの男の子の「普通さ」がことさら気に入りました。
このごろのテレビやメディアに騒がれる、なんだか無理矢理な盛り上げの「イケメン」とか「AKB」
みたいなのには食傷気味だったので、たいそうすんなり飲み込めたのです。

私は、作品とは「お子さんから、ご年配まで」が、各年齢層ごとに「感じたいように感じていればいい」
作品こそ、いい作品と思いますので、この映画は(アニメ、じゃありませんよ、映画、ですぞ)
よい映画です。
だいたい、このごろのテレビやネットメディアはニッチでせまーい世界をクローズアップしすぎです。
正味な話、「粗末なものまで輝かせる」みたいなあっぷあっぷな息切れすら覚えるのです。

いいんですよ、オーソドックスなもので。
いえいえ、オーソドックスに、まず楽しめる作品こそが肝要ですよ。

ゲド戦記と同じ監督さん、ということですね。印象が同じ感じを受けました。
あっさりしてるんです。業がない、といいますか、作品の中で「毒」として描かれるものが
どこか記号めいていて、宮﨑父ほどの「猛毒さ」に至らない印象です。
ジブリというスタジオを使って、作った作品、という位置関係で割り切ればいいのです。

人の胸で泣く、というのも肝心な描写な気がしました。
とても、共感できました。一人で泣くこともあった上で、人の胸を借りて泣ける、ということの
ふんわりとした着地感。どんどん大泣きにつながっていってしまう、その心のほぐれ方を
この映画は、すんなりと見せてくれました。

映画のはじまる前にね、企業CMとか予告編が流れたりするじゃないですか。
あれでね、コーラのCMが流れたんです。若者が、音楽に乗せて、若者連中たちだけで、一斉に
盛り上がって、パーティ気分で、はい、コーク!っていうCMなんですけどね。
これには白けました。(ごめんなさい、コカコーラさん。正直に書くよ)
津波・原発の日本において、もうこんな20世紀的な「若者!」「音楽!」「コーク!」なんて
フレーズを、誰が考えだしてるのよ、って時代錯誤も甚だしいわー、と。
こんな未来にもう向かってない、ってみんな、思ってると思うし、このセンスにびっくりしたのです。
1980年代、でした、このCMだけが。
コクリコ坂の冒頭に、これは、ちょっと、いかがな・・・

人が、ただ、人を好きでいた、というだけの映画、と言えば、そうでもあるんですが、
ここに邦画のように「無理矢理に盛り上げてみせるドラマ」をねじこんでくれなくて、ほっと
したんです。
そして「ホッ」としたかったので、まさにちょうどよかったのです。
物語全体の中で、特段目新しくないもので、ヒロインたちが囲まれていて、日頃の「徳」のような
ものが、物語の節目でキラリと光をだして、全体の流れに大事な力になるという力点は
気持ちがよかったのです。ヒロイン、ヒーローの「秘密の力」でも「備え持った素養」でもなく、
淡々と生きていたら、日頃の生活ぶりこそ地味であっても、要所では少し、気持ちを張りました、という
私たちの「日頃の目線」以上に飛び上がりきっていない。この潔さを、作品でするのは
まして「ジブリ」でするには、少々工夫や度胸が要ったに違いないように思うのです。

ですから冒頭に申しました感想のように、「ハウスのCMみたい」という言い回しが
一番上手な気がします。見終わったあとの車内で、昔のスカパラの「君と僕」という
口笛とぷんが~ぷんが~と鳴るアコーデオンだけの曲があるんですけど、かけててぴったりだなって
思いました。

物語世界全体が、身勝手に「世界」であり続けていて、その中でヒロインたちが「物語」の中で
生活を得ていて、その流れの中から世界にほんの少しづつ働きかけていきながらも、
そこを変革する気も、手に入れようなどいう野望もなく、一緒に世界と生きていってる、この
さりげなさの力を、見終わってからも心地よく、飲み込めた作品でした。

夏にはやっぱりジブリですねえ。恋という砂糖を、ちょっとまぶしていただくのです。
うまし。