作成日: 12/03/10  
修正日: 12/03/10  

ばね

バネはためてこそ、使い道がある


大学の学科40周年同窓会があるというので、普段は愛想のない私が珍しく参加を目指して
こそこそ準備してましたら、前日になって友人N海君が来れるというので、終電二つ前の
時間に泊まりがけで急遽一緒に参加決定。翌日に「朝からカレーかよ」と文句をいただきながら
ドライブ気分で大阪まで行きました。

旧友、先輩、後輩がわんさかいまして、その変貌の少なさになんだか大いに勇気づけられまして
学生当時と少しもテイスト、テンション変えずに話しだせる自分にもびっくりしました。
映写機だとかエディターだとか、映像学科当時の話が変な前置きもなくスルリと話しだせる場所なんて
世間にはあんまりないんだけど、ここでは当たり前にそういう話になりました。
文房具屋さんがあるのですが、そこで「絵コンテ用紙」買いましたデザイン20年前と変更なし!
つか、「絵コンテ用紙」の売ってる売店、その売店のある大学。愉快ですねえ。

帰りには奈良に寄って、美味しいラーメン食べてる間に、友人N森(旧姓)がスカイプ経由で
「今度の休み空けとけ」とアフリカから命令が届き、その1週間後には「朝からうどんなん?」と
文句を頂きながら、道の脇に雪の残るせせらぎ街道を北上、目的地の「とあるラーメン屋さん」で
数年来の念願の麺づくしを堪能、高山で名湯に浸かってまいりました。

週に一度の休みを、フルに遊びに使うと、もうご年配の体ではヒーヒー悲鳴があがりますが、
さすがにリフレッシュ感は強く、よし、生きるぞ、よし、やっていくぞと元気も出るのです。

そしてそこから3日経過するところに、ちょうど去年、大地震が起こったことにたどりつきます。
私は部屋で寝ていて、グラグラと長い揺れを覚えて、延々終わらない時に「遠くで地震が起こってる」
まではわかったので、すぐにテレビをつけました。

NHKも民放も、「街の中に津波が流れ込んでいる最中」を映していました。
そうはいいますが、映ってる画面を見るだけでは「なんで海面にあちこち山やビルのてっぺんが
映ってるの?」という風景にしか見えず、そこが「街」である認識は難しいものでした。

瓦礫は未だ処分におさまりがついていません。1年経って、文明国であるはずの、21世紀の日本で
仮設住宅も、瓦礫も、放射能も、おさまっていないのです。昭和であろうが、未来であろうが、
天災は襲ってくるのでしょう。

この一年は、心持ちをどうおさめたらいいのかを考える機会が多かったように思います。
そうは言ってても、考えるばかりで、おさまりにはつながっていかなかったりもするのです。

上述した「友人たちとの再会」も「地震とその後のこと」もいっしょくたに並列して「過ごす」のが
人です。1年前は、まだ父の癌の手術で、私の家族もみんな心持ちが収まってませんでした。

なにか心がそわそわと居場所を見つけられず、ともすれば「すぐにこぼれだしそう」な預かり知らない
自分の感情があふれそうになるのが怖くなったりしました。
そして、出来る限りでいいから、そこに芽生えたものを、「なにかわかんないまんま」受け取ろうと
思いました。大事なのは「どんな感情か」などと分類しないことです。
あてはまる言葉がないはずです。そしてそのシリアスなピンチに答えられる慰めもないはずです。
だから「わかんないまんま」で背負い込むことこそが、プレーンな状態で事態を掌握させなおす
最初の一歩なんです、きっと。
励ましてもいけないし、落ち込んでもいけない。まず折れきった心が収まるのに時間をかけて、
心の方が「受け取る」準備が出来次第、「わかんないまんま」をできるだけ貰い受ける。
答えが出るのは、うんとあとのことだろうけれど、あと付けの結論なんだろうけれど、
「分かる」のは、あとでいいんだ。あとでいい。

会える友人には会い、会えない友人、会ってない友人には信頼を置き、地震、津波、原子力事故が
起こり、引き続いている日本で、私たちは一斉に過ごしている。
明確な応えも、生半可な「大丈夫」もないまま、比較的正直に生きています。
まだきっと、じゃんじゃん不安が襲ってくるだろうけれど、人の心に強靭なバネが入っててさ、
一人分のバネじゃ受けきれない加減のパンチが見舞われても、そんときゃはねとばされちゃうだろうさ。
友人知人家族がさ、一緒に請け負ってくれるからこそ、バネは幾十かに並びもって、
天災人災の放ってくる猛烈なパンチを、いつかは受け止めて、跳ね返すような気がする。
小さいように見える、そんなひとりひとりのバネを、あなどってくれるなよ。
人の心が持ってるバネは、案外、役に立つんだ。固くて丈夫だから強いんじゃない。
受けて、溜めて、跳ね返す柔らかさこそが「強い」んだと思う。

友人と会ってると、そういう類いの優しさや強さが地味に分かってきますね。