作成日: 16/11/20  
修正日: 16/11/20  

映画「この世界の片隅に」

ふんわり


さんざんな、さんざんな一週間の締めくくりに、せめて、せめてものご褒美にと、
一日前の夜中に突然レイトショーの予約を取り、見に行くことにしました映画が
「この世界の片隅に」こうの史代先生原作の映画でした。

「アリーテ姫」の監督さんだからなーんの心配もしないで観ました。

あらすじとか、演出とかは話してもあんまり意味を感じないのではしょりまして、
ただこの映画の「あり方」の、立ち方、っていうんですかね。そこだけはちと話したくって。

普通に、ただ普通に世界に生きてる人の大多数は「普通の人」ですもんね。
目立ったり、輝いたりしてるんでもなく、淡々と、日々淡々と過ごすわけです。

この映画はそれを「戦争」の最中にもその視線を維持してて、自然体に立ってることを
素直な感情として肯定してる。潔いのだ。台詞に含蓄めいたものを含ませてしまう映画は
山ほどあるけど、そっちのほうの欲が極端に少ないのです。

「息づかい」のようなものを作品全体が大切に、大切にしてることがぴりぴり伝わって来る
心地よさったらなかった。台詞でも、テーマでもなく、「それそこの空気」を一緒に吸ってる
ような感覚を覚えていられること、そのものが幸せな作品だった。

こういうのって邦画にも洋画にも少なくって、アニメとかなんとかってカテゴリーも無意味で、
非常にいい映画だと思いました。そうそう、映画ってこういうの、って思ったのです。

ひるがえって思えば、エピソードそのものはけっこう厳しくシリアスであるはずのものを
ああいう空気にくるんでギフトできる人がいてくれてよかった。あの映画を作ってくださいって
言ってくれてる人たちがたくさんいてよかった。そう、心根の底のほうから「よかったー」って
ただ言ってられるだけの作品の強さですよ。うん、こういうのって最強。