作成日: 20/01/25  
修正日: 20/01/25  

ボールルームへようこそ!(アニメ版)

血潮が駆け巡ります


高校生の男の子の社交ダンスのアニメです。
おしまい!








が、さ、
すごくいいのよ。すごくすごくね!
随分前にはまってしまったのに今日の今日までこのエッセイにできないでいた
私をお許しください。本調子が出る時に打ちたくってさ。

最初、テレビで1話目見た時には、すぐにあきらめちゃいました。
いやいや、こういうのはいいや、って。

でも違ったの。全然違ったの。
はまってからはスカパーとかで見れたりすればほぼ録画してたし(最近やっと全話
コンプリートしたよ!やったね父ちゃん!)、DVDも買ったよ(じゃあなぜ録画?)。
外出時も心くじけた時に見られるようにって、スマホで見られるようにしたよ!
ふーやれやれ。見たい時に見れなくなったらどうしようかって迷っちゃうほど
大好きなんスよ。

さてなぜ、どーしてってトコなんスけど、
主人公タタラ君の「負けっぷり」ですよ。はじめて競技ダンスに挑んでいくので、
先達の仲間に負けたり、すごまれたりして、コテンパンなんだけど、彼の持ってる
目の良さが、ダンスに向いてて、自分より格上の人たちにことごとく「火をつけて
まわる」のね。彼がいたからこそ、脇役の「すごい連中」たちがわんさか燃え盛って
いくんです。

センゴクさんなるダンススクールの先生をリスペクとしつつ、自分の心根と常に
対話しながら模索、工夫をするタタラ君の無謀さというべきか、大胆さと言うべきか、
従来のスポーツものにある「熱血」とはちょっと違う執拗さが、フィットしました。

アニメーションとしての映像美、ケレン味、作画の緻密さ、動画としてのメリハリが
尋常でなくセンスがいい。ダンスシーンなんて、人類としては異常なデフォルメに
至るカットもあるのに「嫌ーーー!」ではなく「おう!そこ!そうだよそうだよ!」と
誰よりも応援に力が入ってしまうのです。作り手の制作観の適切さが、過不足なくて
ものすごく心地よいのです。すばらしく心地よいのです。

上述の技術の裏打ち以上に、物語の「嘘のなるべく少ない進行」っぽさが、またいい。
タタラ君は初心者発進なので、当然ライバルに負け、倒されます(倒されたっけ?)。
でも相手は「初心者を負かした」以上の闘志やら発見に満ちていきます。
タタラ君を経由できて「見つける」ものが、「巧さ」「すごさ」以外の「ナニカ」
であって、実は自分が思ってる以上にそれが愛おしく、渇望されたナニカと
予見に満ち満ちています。

お芝居でも映画でも、どんなことでも「先達」の人って世の中にいますよね?
初心者が入っていくと、そこでどうあがいても立ち行かない壁になる人も
います。そんなとき、「初心者故の溌剌(はつらつ)」以外、なんにも強みの
ない人が、そこに居続けるのには、それなりに「いきさつ」が味方しないと
居られにくかったりもするときってあるじゃないですか?

私は「初心者のだけ」が恋いこがれた気持ちだけが発露する瞬間の、爆発するような
目眩にも似た、誰もに「初期に・たった一度しかない期間」に溢れ出すエネルギーが
大好きです!!下手とか上手とかじゃないもので、もっと別の何かで人を魅了するときって
あるんですよ。それは誰もに「初期」にしか出なくって、本人ですら再現がなされない。
下手であるが故に、未知であるが故に、一種業界に白痴であるが故に、デタラメで、
暴力的で、粗野で、自暴自棄なパワーが、それでしか挑めていけないときがあります。

そういう瞬間に出くわすとね、ああ、二度と見れない、替えの利かないいいものを見た、
そう思うんです。しあわせな気持ちに満ちるんです。

「ボールルームにようこそ!」はそれを何度も何度も思い返せます。現実のはつらつさは
滅多に出会えないけれど、タタラ君はそれをぐんぐん思い出させてくれるんです。
スッゲー嬉しい気分にさせてくれるんです。

ことさら私は「マコちゃん」と、パートナー決戦をする8話前後が大好きです。
なにが人の目を釘付けにするのか。見逃してはならないと、どきどきして
目がそらせなくなるか。そこに居会わせて、本当に良かったと心底思えた経験が
あるか。「ボールルームにようこそ!」にはそれがあります。満ち満ちています。
ですから何度も見ます。なのに何度もうろたえます。ああ、なに?この感情の名は?

人を魅了することの良さが、たっぷりあります。ですから大好きです。