作成日: 20/05/19  
修正日: 20/05/19  

困ったら電話して、の向こう側

奥にあったものを人は見てる


コロナ騒動の一端に、呼びかけられたうたい文句のひとつが、病気にかかったかな?と
思ったら保健所に電話して下さい、というのがありました。国がNHKを通じて
それを喧伝していました。

そして保健所はすでにパンクしていることを国民は知っていました。それは保健所の
怠慢ではなく、組織規模の限度を超えた業務が丸投げされて、破裂していたのです。
そういうわけなので、病気にかかったかも、と思った人は保健所に電話しても
じゃあ検査しましょうか、という段取りには進まず、あれやこれやとはぐらかされた
ような応じ方を受けた方も少なくないようです。

病気をして、すべき順番としては正しい指示ではあったと思います。ところが医療崩壊
寸での最中の保健所は、オーバーワークなのがメディアを通じて報じられていました。
ところがそこへ国からも「困ったら保健所へ」って言い続けられました。

これ、何かに似てるなって感じたのが、「学校の先生」でした。
生徒の就学、困り事、不祥事、部活、PTAとの懇談、ことごとく放り込まれ、
何かあったときの最初の窓口にされ、地域の防犯も、放課後の行動も、全部が全部
「生徒」にまつわれば、学校の先生に丸投げされました。要は「兼業」がじゃんじゃか
乗せまくられていく、しかも拒否権のない一方的な暴力のように足されるだけで
引かれる事がない。

そうした「もう手一杯」は以前から報道されていたりするので、周りのみんなも
それを気づいています。保健所にも先生にも「間に合わない」事を承知で電話せよと
いうのか、と疑念を持っています。

とっくに「業務のインフラ崩壊」に陥っているところや、本当にぎりぎりのサイズまで
ダウンサイジングされた組織に「壊れてしまえ」といわんばかりの有事の丸投げ。
これは随分と頭の悪い準備しかできていなかった社会の制度の不備です。

平時に余剰であっても、有事に間に合わぬ組織であっては、パンクは必然。
その組織に属す人は急激なストレスに潰れます。優秀な人材が、みすみすリタイアに
持ち込まれます。まじめな人ほど尽くし、燃え尽きるでしょう。

日本には「そうなる組織」が大いに心当たりがあります。有事の際に「なんとかなる」
でいい済ませてる節がありますが、ピンポイントに「無理強い」で破綻させます。
だから「属したくありません」人が正常に見えてくるのです。人材不足などと
触れ込む業界にすら、人々はちゃんと目を向けていますし、有事の際になにが
起こるかも知っているのです。その上で起こる「人材不足」ですから、
「その業界の以前になにが起こっていたか?」を洗えば、現状に行き着いてきた
理由は明々白々。

「病気になったら、まず病院に直接行く前に保健所へ連絡して下さい」とは
各政治機構の単位の「市町村」にひとつしかない保健所に連絡を集中させます。
国はそれを分かってた上で、全く改める様子も、増強する様子も見せないまま、
いま、コロナウイルスはにわかに勢いをおさめてくれつつあります。
運がいいだけに乗っかった進み方であり、人の知恵の成した結果ではありません。

この感覚、思い当たる人は多いはずです。
相手がこなせない、できない量の作業を突っ込んで、めちゃくちゃになろうと突っ込み
続ける行為。今回、国はこれをやりました。そして、問題が起こった時に、補強も
善意も示さずに「まずは保健所へ」を貫徹しました。日本の各地で保健所は
機能破綻を起こしてるはずです。職員の何人かは病んだはずです。

さあ、ではコロナがおさまりはじめて、手だてを打てるでしょうか。
また、今回の事に手当をするでしょうか。私は「放置」すると思ってます。
その上で、「じゃあどうする」と、組織を肉厚に改良する知恵はあるでしょうか。
または、それを標榜してくれる人材を貴重とする扱いができる知恵が
我々にはあるんでしょうか。

今回のコロナは、そうした「実際起こった事」そのものではなく、
「実際起こった事の、その向こうに透けて見えたもの」をはっきり見せました。
私は国がやったことのうち組織機能の破綻を起こしたことは罪に問われるべきと
思っています。心底のピンチに、国はだめ押しする側だったことを忘れません。
いやむしろ、「国の本性」はこの手合いか、とも感じます。違うのなら、結果に
示しなさい。